創業者は“ストリート”の第一人者スケーターによるブランドHUF - Z-CRAFT

2022.9.7

創業者は“ストリート”の第一人者
スケーターによるブランドHUF

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

裕福な家庭で育ったキース

HUF(ハフ)の創業者は1974年生まれのキース・ハフナゲル(Keith Hufnagel)。
ブランド名は、彼のファミリーネームに由来しています。

キースはストリート仕込みのリアルスケーターですが、生い立ちはかなり恵まれていたようです。
何しろ父親は、ニューヨークの有名な超高層ビル、メットライフビルを本社とするアメリカ有数の保険会社・メトロポリタン生命保険の副社長です。
キースが生まれ育ったスタイヴサントという街は、マンハッタンの中にあるとは思えないほど緑豊かで静かな環境で、ピータークーパー・ヴィレッジ地区にある彼の生家は、赤煉瓦造りの高級アパートでした。

ピータークーパー・ヴィレッジはイースト・ヴィレッジと隣接しています。
イースト・ヴィレッジは1960年代からヒッピーが集まり、その後もバスキアやキース・ヘリング、ナン・ゴールディンをはじめ、多くのアーティストやミュージシャンが住んだ地域として有名。
ヒッピーやパンク文化の中心地であり、昔も今もアートの香りが強く漂う街なのです。

そんな雰囲気の中で育ったわけですから、おぼっちゃまとはいえキースも自由闊達で先進的な精神を育むことができたのかもしれません。
キースは13歳の頃から、友人たちとブルックリン橋の下の路地でスケートボードをはじめ、あっという間にのめり込んでいきます。

高校を卒業する1992年までニューヨークで過ごしたキースは、大学を選ぶ段になると、スケートボードの聖地である西海岸・サンフランシスコに移り住むことを決意します。
エキサイティングなライディングを生むのに絶好の環境がある西海岸は、ストリートスケートボードの聖地なのです。

そして、名門のサンフランシスコ州立大学に進学しますが、プロスケートボーダーになるため半年で中退。
1990年代を代表するトップスケーターとして名を馳せ、その勢いのままブランド創設へと進んでいきます。

サンフランシスコ
photo:Berellian

2020年に急逝した創業者

キース・ハフナゲルが2002年にLAのテンダーロイン地区で立ち上げた店は当初、彼が選んだスケートボードとスニーカー、洋服や小物を扱うセレクトショップでした。
プロスケーターとして名を馳せたキースが認める本物中の本物の商品や、入手困難なアイテムを購入できるその店は、“プレミアショップ”として有名になります。
そして、その店のプライベートブランドとして立ち上げたのが、今日に続くHUFなのです。

HUFのショップ
photo:Takashi Matsumotof

キースは、洗練された現代的なデザインの中に、アメリカの伝統的な職人技やヴィンテージ風味を加味した服作りを目指します。
過去と現在が絶妙にミックスされた高いデザイン性に加え、HUFの服は高品質で実用的、もちろんスケートの激しい動きにも十分に耐えられる商品だったため、立ち上げ当初から多くのスケーターに注目されます。

また、Tシャツやスウェットに施されるグラフィックやスローガンは、キースの知性を反映すると同時に、どこか無頓着でとぼけたような雰囲気がありました。
そのシニカルで洗練されたノリに、カウンターカルチャーを愛する人たちが強く共鳴します。

【ハフ エッセンシャル TT ショートスリーブ Tシャツ】
【ハフ エッセンシャル オリジナルロゴ ショートスリーブ Tシャツ】
【ハフ トリプルトライアングル クルー】
【ハフ エッセンシャル TT ロングスリーブTシャツ】

HUFが創業から20年の間に、スケート界だけではなくストリートファッション界で確固たる地位を築いた要因は、自身の思想や嗜好、そしてスケーターとしての経験を服づくりに落とし込んだ、キース・ハフナゲルのカリスマ性によるところが大きいのです。

そんなキースですが非常に残念なことに、2020年9月24日、46歳という若さでこの世を去りました。
死因は脳腫瘍。2年半にわたる闘病生活の末、LAの自宅で亡くなったといいます。

キースはHUFというブランドの創業者ですが、それ以上に、1990年代に一世を風靡したプロスケーターとして高名でしたので、その死を世界中のスケーターが悼みました。
キースはストリートの形状を最大限に活用する、“ストリートスケーター”の第一人者。
複雑なトリックではなく、シンプルながらダイナミックなオーリーを駆使する彼のスケートスタイルに影響を受けた人は多く、現在のスケートシーンに残した功績は多大と言われています。

YouTubeなどにはスケーターとしての彼の足跡をまとめた動画が多数アップされていますので、HUFというブランドに興味を持った方は、ぜひ一度視聴してみることをおすすめします。

ストリートスタイルとは

キース・ハフナゲルは“ストリートスケーター”の第一人者であると書きましたが、スケートボードのジャンルについて、もう少し詳しく解説しましょう。
現在ではスケートボードにもさまざまな競技スタイルがあります。

U字型の滑走面を持つコースを使い、一定の時間内に連続トリックをおこなって競う「バーチカル」。
平らな地面でスケートボードを裏返したり回転させたり、垂直に立ててバランスを取ったりするなど、ボードを自在に操る技を競う「フリースタイル」。
お椀形のセクションや壁などをいくつも組み合わせ、その形状を生かしたトリックを競う「パーク」。
一列に並べたパイロンやコーンを滑り抜ける速さを競う「スラローム」。
下り坂を使い、ゴールまでの速さを競う「ダウンヒル」。
そして、街中に存在する斜面や縁石、手すりや段差などの構造物を模したコースを使い、トリックの完成度や難易度を競う「ストリート」。

このうち、ストリートをはじめとするいくつかの種目は、2021年におこなわれた東京オリンピックで正式競技に採用され、日本人選手が大活躍したので、強く記憶している人も多いでしょう。

【ハフ ダンデライオン ロングスリーブ Tシャツ】
【ハフ エッセンシャル ボックスロゴ ロングスリーブ Tシャツ】
【ハフ レミオプルオーバーフーディー】
【ハフ シェイクダイプルオーバーフーディー】

今日につながるスケートボードスタイルの基礎を築き上げたのは、カリフォルニア・ヴェニスビーチのサーフィンチームである“ゼファー”から分離して結成され、1970年代後半に活躍したZ-BOYSですが、ストリートスケートは1980年代に、パウエル・ペラルタ社のプロスケートボードチームであるボーンズ・ブリゲードが創出したジャンルと言われています。
街にある段差や壁、ベンチ、階段や手すりなどを使ってゲリラ的にスケートをした彼らのスタイルがお手本となり、世界中に広まったジャンルが「ストリート」なのです。

トリックをする男性
photo:Brady Hsu

キース・ハフナゲルの遺志

HUFはストリートファッションを愛する若者から大人まで、幅広く支持されるブランドです。
その服にはキース・ハフナゲル自身が好んだアート、音楽、スケートなどの要素がほど良くミックスされ、ベーシックな雰囲気の中に一ひねり加えた遊び心あるデザインが特徴。
さまざまなアーティストとのコラボアイテムも、毎シーズン多数ラインナップされます。
鋭いストリート感覚を持つ人には、そうした“わかる人にはわかる”HUFの服が、たまらなく魅力的に映るのです。

またキース・ハフナゲルは生前、若いスケーターのサポートを熱心におこなっていたことで知られます。
キース自身も若い頃、リアル・スケートボーズやステューシーといった有名ブランドからのサポートを受けたおかげで、思う存分スケートにのめり込み、世界に大きな影響を与えるような活動ができました。
その恩を忘れず、自分のブランドでも儲けを度外視して、後進をサポートしようと決めていたようです。

【ハフ エッセンシャル トリプル トライアングル コーチジャケット】
【ハフ エッセンシャル TT コーチジャケット】
【ハフ ドメスティック ロングスリーブTシャツ】
【ハフ エッセンシャルズ ドメスティック クルー】

日本のウェブメディアによっておこなわれたインアタビューで、キースは以下のように述べています。
「僕の役割は[HUF]が正しい方向に向かうようにすること。その上で、自分がスケーターとしてサポートしてもらったように、スケートボーディングをサポートすることが大事かな。自分たちの抱えているライダーやアーティストをしっかりとサポートして、お金儲けのためだけでは無く、彼らがどれだけちゃんとやりたいことが出来るかに比重を置き、そういう環境をつくること。それが常に自分の役割だと思っているよ」(Mastered 2015.05.20)

キースは、子どもたちの使えなくなったボロボロのスケートボードを新しいものと無料で交換し、回収した板でサポートアーティストに作品を作ってもらったりしています。
大人気ブランドとなった後でも忘れなかったそうしたストリート感覚こそが、HUFというブランドにエバーグリーンの輝きをもたらしていたのかもしれません。

若くしてスケート界のレジェンドとなり、HUFというブランドを通して自身の理想を実現しながら、社会に貢献しようとしていたキース・ハフナゲル。
彼の遺志が色濃く反映されているHUFの服に、ぜひ一度、袖を通してみてはいかがでしょうか。

キース・ハフナゲル
photo:Rian Castillo

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