#22 100年以上の伝統、チャンピオンとカレッジファッションの進化
チャンピオン看板

2024.6.12

100年以上の伝統、チャンピオンとカレッジファッションの進化

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

チャンピオンの創業は100年以上前

昨今のストリートファッション界隈では、カレッジ風のデザインを取り入れたスタイルがトレンドになっています。
カレッジファッションといえば、忘れてはならないブランドがチャンピオン。
チャンピオンとアメリカのカレッジシーンは切っても切り離せない関係性にあることを、ブランドの歴史を紐解きながら確認していきましょう。

チャンピオンはとても長い歴史を持つブランドで、創業は今から100年以上前の1919年です。創業者は東欧出身のユダヤ系移民であるサイモン・フェインブルーム。
彼はこの年、ニューヨーク州ロチェスターに、チャンピオンの前身となる会社、ニッカーボッカー・ニッティング・カンパニーを設立しています。

“ニッカーボッカー”というと、土木作業に従事する方や鳶職の方が使う、腿の部分が幅広い作業ズボンのことを思い浮かべる人も多いでしょう。
すると、チャンピオンの前身は、ワークウェアを製造販売する会社だったのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
ニッカボッカーは19世紀前半にオランダからの移民がアメリカへ持ち込み、裾が邪魔にならないアクティブな形状だったことから、当初から野球やゴルフ、乗馬、登山などで使われるスポーツウェアとしてアメリカ国内で普及したのだそうです。

創業者サイモンの没後、社業を受け継いだ息子のエイブ&ウィリアム兄弟は、社名をチャンピオン・ニッティング・ミルズ社へと改めます。
彼らは当初、屋外労働者用のTシャツやソックス、ウールシャツなどのアイテムを販売。
このウールシャツが米陸軍士官学校のトレーニングウェアとして採用され、スウェットの原型になっていきます。

チャンピオンが初進出した大学は1817年設立の名門、州立ミシガン大学でした。1924年、ミシガン大学が陸軍士官学校の採用例を参考に、高品質かつ手頃な価格で販売されていたチャンピオンのアイテムを学生用アスレチックウェアに指定します。

一方チャンピオンは、1930年、Tシャツやスウェットシャツの胸元に、ナンバーや大学名をプリントするレタリング加工を開発します。

チャンピオン①
photo:tiny-al/iStock

口コミで全米の大学に広まる

これは、体育の授業で学生に貸し出したウェアをスムーズに管理回収するという、大学側の実用的ニーズに応えるためだったそうです。
しかしこのプリントが、それまで下着として考えられていたTシャツやスウェットを、アウターへと格上げすることになります。
つまりこのとき、現代でも人気が高いカレッジファッションが誕生したと考えていいでしょう。

ミシガン大学が採用したチャンピオンのアスレチックウェアは、合同練習や試合で目にした他大学の学生やコーチの間でも評判となり、やがて口コミで全米の大学へと広まっていきます。

また、名高きスウェット“リバースウィーブ”をリリースしたのと同じ1934年、チャンピオンは各大学のブックストア(生協)でTシャツの販売を開始しています。
こうしてカレッジプリントを施したチャンピオンのアイテムは、スポーツをするときだけではなく、学生の普段着として普及していくことになるのです。

1950年代には、大学名をプリントしたアイテムが、学生たちの間で本格的に流行します。
アメリカ東部名門大学の学生たちのスタイル、いわゆる“アイビーリーグスタイル”が注目されたことによるものです。

その流れは日本へも波及。
チャンピオンのカレッジプリントのTシャツやスウェット類は、この頃から東京や大阪をはじめ、全国各地でも目にするようになったそうです。

ところで、チャンピオンのロゴマークは、目玉のようなユニークな形をしています。Championの頭文字である「C」の字が図案化されていることは一目瞭然ですが、真ん中のラインは何?と思わずにはいられないでしょう。

実はチャンピオンのロゴマーク、1950年代まではゴールテープを切る瞬間のランナーの姿のシルエットでした。
しかし1960年代に入ると、ランナーは簡略化されて「C」の字の中に描かれるようになります。
そして1969年にロゴマークを一新。「C」の中にいたランナーは、ついに一本のラインで表現されるようになったのです。

1970年代中頃には、現在のチャンピオンロゴとして親しまれる赤・青・白のトリコロール配色も生まれ、お馴染みのマークが完成しました。

チャンピオン②

アイビーとプレッピーとチャンピオン

こうして歴史を順に追ってみると、チャンピオンというブランドがカレッジファッションの先駆者であることがよくわかったと思います。
そのカレッジファッションのトレンドは、もう数え切れなくらいのリバイバルを繰り返しています。

前述のように最初は、1950年代のアイビーリーグスタイルの流行に伴うもので、以降、そうしたファッションは、「キャンパスルック」や「カレッジルック」と呼ばれるようになります。
アメリカの学生たちのリアルな着こなしを範とするもので、もともとはカラーリングを含め、各大学の特色を示す一種のユニフォームのようなものでした。

ただ、1950年代のアイビーリーグスタイルは、ロゴTシャツやスウェットといったカジュアルアイテムもその一部ではあったものの、中心はボタンダウンシャツや紺ブレに代表される、少しかしこまったファッションでした。

Tシャツやスウェットのようなラフで若々しいアイテムは、1970年代後半から1980年代初頭にかけて世界中で流行した、アイビーの波及系である“プレッピースタイル”でより深く浸透していくことになります。

アイビーリーグに代表される米一流大学への進学コースにある私立高校はプレパラトリースクールと呼ばれ、それを略したのが“プレップ”。そこの生徒たちが“プレッピー”です。

アイビーリーグスタイルで使われるアイテムをより個性的に、カジュアルに着崩すのがプレッピースタイルの特徴だったため、ルーツは下着であり、その後もキャンパス内でだけ使う普段着のロゴ入りTシャツやスウェットは、非常に彼らの指向に合うアイテムだったのです。

プレッピースタイルは元祖であるアイビー以上に世界中へ広まり、その後はほとんど絶え間なくリバイバルを繰り返しています。
現在もまたそうしたリバイバルの渦中にあるわけで、ここは乗らない手はありません。
そこで、せっかくならその歴史に敬意を表し、オリジネーターであるチャンピオンのアイテムで決めることをおすすめします。

【チャンピオン】
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チャンピオン③

シンプルな無地Tにも特色あり

チャンピオンのカレッジ風アイテムはまさに最高ですが、それだけではなく、シンプル極まりないいわゆる“無地T”もとても人気があります。
袖口に小さなロゴ刺繍だけをあしらったミニマルなデザインで、程よくワイドなシルエット。そして生地は、肌触りのいい綿100%のものが使われています。

Tシャツの生地は、その厚みを「オンス(Oz)」という単位で表します。
1ヤード(約90cm)四方に対する生地の重さを測定し、1オンスは28.3495g。このオンスの数が大きいほど重い生地、つまり厚手の生地ということになるのです。

Tシャツの場合、5オンスがもっとも一般的な厚みで、それ以下は薄手の生地、それ以上は厚手の生地とされています。

標準となる5オンスのTシャツは、軽さと“しっかり感”のバランスが取れているため、市場に最も多く流通していますが、人気があるチャンピオンの無地Tは6オンスあるいは7オンスで、ヘビーウェイト(厚手)の部類に入るものです。

6~7オンスのTシャツは厚手で型崩れしにくいため、長持ちするという利点があります。
また、薄い色でも透けにくく、かなり丈夫なのでスポーツでの利用ににも最適。
全体の風合いが古着っぽく、ガンガン洗ってさらにニュアンスを出せば、とてもいい表情を見せてくれ流のもいいところです。

ヘビーウェイトの生地だと固くてごわつくのではないかと心配する人もいますが、綿100%なので、むしろ肌にしっくりと馴染むような心地よさが味わえます。

チャンピオンのアイテムはどれも、オーセンティックで質実剛健なイメージがあります。
シンプルなアイテムでもさらりと着ているだけで、“おしゃれが分かっている”という感じを醸し出すものです。
この機会にぜひ、あなたのクローゼットに迎え入れてみてください。

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【チャンピオン】
チャンピオン④
photo:Robert Way/iStock

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