#14 "真の“ミリタリズム”を追求するバッグブランド、ブリーフィング
ブリーフィング看板

2024.3.27

真の“ミリタリズム”を追求するバッグブランド、ブリーフィング

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

日本企画のMade in USA

ブリーフィング(BRIEFING)は、セルツリミテッド(現在のユニオンゲートグループ)という日本の会社が1998年に立ち上げたバッグブランドです。
と聞いて、「あれ?」と思う方もいるかもしれません。
そういう人はきっと、「ブリーフィングってアメリカのブランドじゃないの?」と思っているのではないでしょうか。
ブリーフィングの製品はすべて“Made in USA”なので、アメリカンブランドだと思い込んでも無理はありません。
しかし実は日本の会社が日本国内で企画し、製造をアメリカの工場に委託している、アメリカ製・ドメスティックブランドなのです。

ブリーフィングの生みの親は、当時のセルツリミテッド社長で、現在もユニオンゲートグループの代表を務める中川有司氏。
1969年生まれの中川氏は、東京モード学園卒業後、サザビーに最年少デザイナーとして入社。その後独立し、1992年に株式会社セルツ(後のセルツリミテッド→ユニオンゲートグループ)を創業します。
1997年10月にはオリジナルブランドのラップス(WRAPS)を立ち上げ。そして1998年4月にブリーフィングをスタートさせました。

ラップスは、アウトドアをタウンに落とし込んだバッグブランドで、セルツリミテッドが国内で企画・デザインし、素材調達と縫製をアメリカの工場に委託する方式でアイテムを生産。
そのデザイン性と“Made in USA”ならではの確かなモノづくりが評価され、1990年代末に爆発的なヒットとなります。

その流れを受け、同じ方式でセルツリミテッドが続いて世に送り出したのが、ブリーフィングだったのです。
ラップスのテーマは“アウトドア”でしたが、ブリーフィングのテーマは“ミリタリー”。
いつの世も戦争は悲しき結果を生みますが、その一方で、勝つか負けるか、生きるか死ぬかという極限状況を支えるため、さまざまな画期的技術や産業が生み出されてきました。
“ミリタリー”というジャンルでくくられる素材や規格、デザインは、戦場だけではなく幅広い分野で活用され、その機能性やデザインに魅せられる人も数多くいます。

ブリーフィング①
photo:Nodir Bakhtiyorov/iStock

アメリカの軍需工場を振り向かせた理由

アメリカの本物の軍需工場で自社製品を作れないだろうかと模索していた中川氏は、とある伝手で当時の軍需用バッグ最大手であるミリタリーファクトリーと繋がることができました。
さっそく取引を開始しようと考えたのですが、ミリタリーファクトリー側の反応が鈍く、なかなか話を前に進めることができません。
最大手のミリタリーファクトリーといえば、米軍や政府機関相手の大きな商売が中心なので、海の向こうの小さな会社の小さな発注は後回しにされてしまったのです。

このままでは埒が開かないと判断した中川氏は、ミリタリーファクトリーが在庫で持っている生地や付属品を買い取り、まずは日本国内で商品サンプルを作ります。
道具としての機能性、実用性を求める傾向の強かった中川氏率いるセルツリミテッドが、渾身の力で作り上げたそのサンプルの良さはミリタリーファクトリーにも伝わり、以降はセルツリミテッドを大切な取引相手として認めるようになったそうです。

そんな経緯で1998年にスタートを切ったブリーフィングはまず、ブリーフケース、ウエストバッグ、トートバッグ、ポシェットの4型をリリースしました。
耐久性や強度に優れた軍用素材を使用し、本場アメリカの軍需工場で生産されたそれらのバッグは多くの人に支持され、ブリーフィングは順風満帆のスタートを切った……と思いきや、数年後に大きな壁が立ちはだかります。

2001年9月11日に発生した、アメリカ同時多発テロの影響です。
9.11以降、ブリーフィングの生産を一手に引き受けていたミリタリーファクトリーは、アメリカ軍用品の大増産のため、工場のラインのほとんどが抑えられてしまったのです。
ブリーフィングのような海外民間ブランドの小ロットの仕事は後回しにされ、結果、製造自体が不可能になってしまいました。

こればかりはいくら頑張ってもどうにもしようがなく、結局、生産の再開は2003年まで待たなければなりませんでした。
しかしそのブランクは逆に、日本のバイヤーやプレス、またブランドのファンに対し、ブリーフィングが米軍御用達の本物の軍需工場で製造されているということを強く印象づける結果となります。

生産再開後の歩みは非常に順調で、ミル・スペック(米国における軍用品の調達規格)に準拠した真の“ミリタリズム”を追求するバッグブランドとして人気を博し、現在ではビジネスからカジュアルまで年代を問わず様々な商品を多数発表しています。

ブリーフィング②
photo:lithium366/iStock

バリスティックナイロンとMOLLEシステム

ブリーフィングのバッグといえば、丈夫そうで織り目も美しいナイロン素材を使用した外観を思い浮かべる人が多いと思います。
ブランドの代名詞ともなっているそれは、「バリスティックナイロン」と呼ばれる分厚く強靭な素材。
ブリーフィングはブランド立ち上げ時から一貫して、このバリスティックナイロンをメイン素材としてバッグ作りをしているのです。

バリスティックナイロンとは、アメリカの化学会社・デュポン社が、第二次世界大戦の空軍兵が着用するフレークジャケットの素材として開発した強化型ナイロン。
摩耗耐久性に優れ、通常のナイロンの5倍の強度があると言われていて、さまざまな軍需用品や防弾チョッキなどにも活用されている超優秀な繊維なのです。

ブリーフィングのバッグの裏地や芯材には、軽量で頑丈なオックスフォード織りの生地、「パッククロス」が採用されています。
細部に使われている素材やパーツはいずれもミル・スペックに基づくものを取り入れ、ファスナーは“世界最良”と名高い日本のYKKのものを使用しています。
またブリーフィングのバッグは、ファスナーの引き手を金属製のものではなく、すべて紐仕様にしています。
これはグローブを装着していてもスムーズな開閉を実現するための工夫で、ミリタリーの世界観のひとつでもあるのです。

またブリーフィングのバッグの多くに見られる特徴的な仕様が、前面に施されたウェビングベルト。
これは「MOLLEシステム」(正式名称は「Modular Lightweight Load-carrying Equipment」)と呼ばれるもので、1997年以降、米軍が広く採用している個人装備システムです。
カラビナなどを使って装備品を簡単につけたり外したりすることのできるこの装備は、非常に機能的であるとともに、デザイン的にもグッとミリタリー気分を盛り上げる演出的効果があるといえるでしょう。

【ブリーフィング】
【ブリーフィング】
【ブリーフィング】
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【ブリーフィング】
ブリーフィング③
photo:breakermaximus/iStock

ゴルフ場で増殖するブリーフィング

そんなブリーフィングが最近、特に力を入れているのがゴルフライン。
バッグブランドとしてのブリーフィングはそこまで意識していなかったのに、ゴルフ用品からこのブランドを好きになった人も多く見受けられます。

ハードな都会でのビジネスライフやカジュアルシーンを支えてきたブリーフィングのアイテムは、ゴルフ場でも遺憾なくその良さを発揮。
また質実剛健で洗練された機能美のデザイン性はグリーンにとてもよくマッチするため、ゴルフ場でブリーフィング愛好者は激増しています。

アメリカの軍需工場で生産されるブリーフィング製品は厳格な品質管理がなされているため、耐久性が高く長期間にわたって使用できます。
ゴルフという外部環境にさらされるスポーツで、頑丈で信頼性の高いブリーフィングのアイテムが求められることはまったく不思議ではありません。

ブリーフィングのゴルフアイテムは、プレーヤーのニーズに応えるために設計されています。バッグは必要なクラブやアクセサリーを効率的に収納できるように設計されていて、使いやすさが重視されています。
外側にはバリスティックナイロンをはじめとする撥水性の高い素材が用いられているので、様々な気象条件に対応できることも特徴です。

その洗練されたデザインも、ブリーフィングのゴルフアイテムが人気を集める大きな要因です。機能性を重視しながらもスタイリッシュであり、なんといっても信頼性の証でもある「BRIEFING」の大きなブランドロゴや、ブリーフィングらしい「MOLLEシステム」のウェビングベルトが目を引きます。
バッグ以外にも帽子やバイザー、シューズケースなどさまざまなアイテムがラインナップされていて、自分のスタイルやニーズに合ったものを選択することができるでしょう。

かくいう私もゴルフをするのですが、最近のゴルフ場では本当に“ブリーフィング率”が高くなってきていることを実感します。
ブリーフィングのゴルフアイテムは、バッグ類と同様、他のブランドのものと比べて決して安くはありません。
品質の高さから考えればそれも当然のことだとは思いますが、高くてもこれだけ普及しているということは、きっと使ってこそわかる良さがたくさんあるのでしょう。
私も今使っているものがダメになったら、次は絶対にブリーフィングのゴルフバッグにしようと思っています。

【ブリーフィング】
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ブリーフィング④
photo:aetv/iStock

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